安江工務店

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ニコニコ家族

2011/02/10(木)

 ニコニコ家族 ①

 この彼の後ろを走っている車には喧嘩中の夫婦が乗っていた。車内ではFMラジオがつけてあり、運転手の主人は無言で運転している。助手席では横ばかり向いている妻が乗っていて、二人で開店したばかりのデパートへ向かう途中だった。喧嘩の原因はちょっとした会話の言い方によるもの。主人の言っていることに答えようとしている妻の返答が的を得ていないことに対して、たしなめようとした主人の言い方が気に入らなかったようだ。妻の一点を見つめている様な態度に、主人は運転していても心地よさを感じれず、大声を張り上げたい心境になっていた。

そんな主人は前を走っている彼の運転の様子から、イラついていることに気づいた。後ろのガラス越しに見える彼の仕草を理解して、自然とニヤニヤしてしまった。

(あいつ、あせってるなあ。前が遅いんじゃねえ?)

ニヤ付いている主人に気づいた妻が今朝の喧嘩のこともありスイッチが入ってしまった。

 「何笑ってんの?あんた、私を馬鹿にしてるんでしょう?」

 妻の性分は一度怒ると相手の話を聞かなくなってしまうことで、主人が一番恐れていることだ。

 「ちがうよ。前の車が・・・。」

 主人が前の運転手のことを説明しようとしたが、もう聞き入れる様子がなく、たまっていた鬱憤が後をついで出てくる。

 「あんたはいつもそう。人がまじめに話しているのにそうやってへらへら笑っているだけ。もう、うんざり。」

 「ちがうって。前の車が。」

 「前の車の話じゃないの。あんたの話なの。」

 この後ろの車には出張中の上司と部下が乗っていた。取引先の商談に失敗して責任を感じている助手席の部長と、あまり仕事の意味を理解していないノー天気な部下が運転していた。出世をかけた商談だけに落ち込みようはかなりのものだ。すると、その部長の携帯電話が鳴った。

 「もしもし。」

 電話の向こうは会社の責任者で、今回の社運をかけた大事な出張のことについてだった。

 「先方から連絡が入ったよ。」

 「あ、はい。」

 「商談は破棄なのかね。」

 「あ、いや、それですが、しばらく検討しなおすような・・・。前向きと言うか・・・。」

 「相手はあまりいい反応を見せなかったようだが・・・。」

「いや・・・そんな感じでも・・・ない様で・・・」

「・・・君の責任についてだが・・・。」

 携帯を握り締めている部長の額には汗がにじみ出て、今にも滴り落ちそうなほど大きくなっている。

第二話終  続く・・・。