2011/02/14(月)
ニコニコ家族 ①
その後ろでは電話を切ったばかりの部長が額の汗さえもぬぐわず、上司の言葉が頭の中を支配していた。今頃会社では今回の破談について会議を行っているはずである。そんなとき、隣で運転しているノー天気な部下が、前の車の運転手がしきりに前方を何度も何度も指差していることに気が付いた。
(何だろうあの車?・・・前のほうで何かあったのかな?・・・事件?)
ノー天気な彼は仕事での出張にあきはじめていて、何か面白いことがないか考えていたところだった。
「部長。何かあったんでしょうか?」
部下の言葉がなんとなく耳に留まった。
(お前、さっきの電話、聞こえていたのか?それとも、すでに裏で何か?)
部長は部下の言葉にこう思い、すかさず問いただした。
「何のことだ?」
「何か起こっているみたいですが。」
「怒っているだと?」
「ええ。事件ですよこれは。」
「当たり前だ。怒っているに決まっているだろ!事件なんだよこれは。」
「え、ご存知なんですか?」
「・・・お前、何か知っているのか?」
「いえ、詳しいことはわかりませんが、大変な事件になっていることだけは分かります。」
車の中で大変な勘違い事件が起こってしまった。
「どうしてそんなことが言える。」
「いやあ、確認したわけじゃありませんが・・・前、何かやったんでしょうねえ。」
「前?・・・いつのことだ?」
「だから詳しいことは分かりませんが、何かやらかしたんですよ。」
「え?・・・何?何をやらかしたんだ?おい。教えてくれ。」
部長は運転している部下の肩にしがみつき、何とか聞きだそうとした。
「危ないですよ。部長・・・。どうしたんですか?」
(そこまでして知りてーことか?)
「前、何をしてしまったんだ?なあ、何でお前が知ってるんだ?」
(俺何かやったかなあ?こいつ誰から連絡をもらったんだ。)
「落ち着いてください。部長。」
部長はこの言葉で手を離すと、過去の仕事の失敗をひとつひとつ思い出していた。
(えー、あれは確か、誤魔化し通したし。あれも、・・・もみ消したよな。確か・・・)
部長はいつの間にか目を閉じて真剣に指折り数えて考えていた。
(まてよ。・・・もしかして、受付の河合ちゃんがひそかにお気に入りなのがばれて、上司の個輪井さんに報告されて、会社内でのセクハラ問題に発展して、女性社員に「セクハラ親父よ。キャー」とか言われて、社長に「こんなことでは困る。」と言われて、マスコミがかぎつけてきて、スキャンダル発覚で週刊誌でたたかれて、レポーターが追いかけてきて・・・)
部長はもう、冷静な判断力がなくなってしまった。
第四話終 続き・・・。