安江工務店

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本を読む。

2012/03/05(月)

こんばんは、中村店ナガタです

久々にやります、読書記録。

1冊目、さだまさし『アントキノイノチ』

岡田将生くんと榮倉奈々ちゃんで映画化したやつの原作ですね。

あるきっかけでこころを閉ざすようになってしまった杏平が

何とか繋ぎとめた社会との繋がりである「遺品整理業」の仕事を通じて

そして、偶然再会した「ゆきちゃん」との関係を通じて

ことばを、表情を、こころを、取り戻していく物語。

***

いやー…さだまさしさんって天才ですね。

お正月休みに神戸に持って行っていたのですが、

帰りの新幹線の中で読み終わりを迎え、

危うく満員の新幹線の中、一人で泣きそうになってしまいました(笑)

悪意を持つ人間はとても残酷で

それでも、杏平を取り巻く人たちは限りなく優しくて…。

「遺品整理業」という仕事についても、感心するほど深く深く調べられていて

とても感情移入しやすく、夢中になって読みました。

「死」と隣り合わせに存在する「現在」。

生きることの尊さ、切実さを、改めて痛感させられます。

ところで「アントキノイノチ」という題名。

どっかのお笑い芸人のような、有名な元プロレスラーのような…。

その謎は、小説を読んでいたら分かります★

2冊目、白川道『冬の童話』

やり手の出版社社長、聖人と、

歌の才能を持ちながらそれを生かすことなく、派遣社員として働くそら。

2人がひょんなことから出会い、お互いの弱い部分も認め合い、

これから前向きに頑張っていく…そんな時に起こった悲劇。

***

これも、読み終わったのが昼間だったからいいものの

夜、一人だったら多分号泣してたと思います(笑)

よくある純愛ものかと思いきや、奥が深かったです。

ひとつの会社をたばねる敏腕社長だってもちろん一人の人間で、

人に言えない事も、弱い部分も、間違える事も、寂しくなることも、

あるんだということを「ああそうなんだなぁ」と漠然と感じました。

人間が関わり合うことに、「たった一つの正解」はない。

だけど、自分をさらけ出せること、相手に対して誠実であること、

そんな当たり前のことの大切さを改めて想いました。

3冊目、入川保則『その時は、笑ってさよなら』

2011年2月、癌により「余命半年」を医師から伝えられ、

その後一切の延命治療を拒否して、2011年12月24日に亡くなられた

入川保則さんの最期の自伝です。

***

断固小説しか読まない私(笑)が、久々に読んだ、小説以外の本です。

何故かというと、入川さんは神戸出身の俳優さんで

直接の知り合いではないのですが、私の知り合いが入川さんの近しい親族だったから。

「入川さん、余命宣告されたんだって!いま、記者会見やってる!」

と、実家の母から焦り気味のメールが届いて知った入川さんの病状。

でも、記者会見の時どおりあっけらかんとして、全く悲壮感のない入川さんの晩年が

飾ることなく、等身大のままで書かれています。

ご存命中はどうしても読む気になれず、亡くなられてから購入し、読みました。

この人は、すごい。

「潔い」とか「達観している」とか、ことばにすると薄っぺらくてイヤなのですが

入川さんのもつ「パワー」が、ものすごいなという感じを受けました。

そのパワー故に、たくさんの人に受け入れられ、たくさんの人に可愛がられて、

たくさんの人に惜しまれて、見送られたんだなあと、少し羨ましくなりました。

この本を読んだ多くの人が感じると思うのですが、「この人みたいな死に際を迎えたい」。

それを実現させる為には、毎日毎日「その日が最後の一日になるかもしれない」ことを

心に留めながら、生きていかなきゃなあ、と思うのでした。

4冊目、湊かなえ『少女』

「人の死ぬ瞬間が見てみたい」。

友達が自殺したところを見た事があるという友人の話を聞き、

そんな強い衝動に駆られて動き出す2人の女子高生。

物語は、悲しく、残酷に、切なく、だけど滑稽に進みます。

介護施設で、病気の子供が集まる病院で、

2人は、人の死に目に会うことができるのか…。

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この流れで、すぐに湯本香樹実さんの『夏の庭-The friends-』を思い出しました。

(あとがきにもそう書いてありました。私、基本的にあとがきは全く読まないのですが

本屋の店員さんが書かれたこのあとがき、とても良かったです)

不謹慎だということを頭では理解しながらも

抑えることのできない「死」に対する好奇心、畏れ、憧れ。

だけど、その感情は「生」への強烈な執着と表裏一体で…。

不思議なものだな、と思います。皮肉なものだとも。

小説を読んでいる間の、映画にもなった前作『告白』を読んでいる時と同じような

焦燥感に駆られ、もどかしく、何とも気味の悪い読中感。

これが彼女の魅力ですよね。麻薬みたいで、どうも癖になります。

でも、作中の設定にすこし入り込めない感があり、

個人的には前作の『告白』の方が作り込んだ、読み応えのある感じがして好きでした。

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以上、4冊。また長くなりました。失礼致しました。

偶然なのか、私の趣味なのか、今回は4作とも、「死」にまつわる話でした。

余命を宣告されて、「ようやく迎えが来たか」とあっさり受け入れる人、

やりたいことがあるのに、会いたい人が居るのに、死んでいかないといけない人、

前の日まで元気に過ごしていたのに、突然な死を迎えてしまう人…。

本当に様々ですが、当たり前のことながら、誰にも言えるのは

明日かも80年後かもしれないけど「絶対に死ぬ」ということですね。

「死んだ後、その人のことを誰も思い出さなくなった時、人はほんとうに死ぬんだ」

ある人に言われたことばです。

死んだ後、1人でも2人でもいいから、私のことを昔話に交えて笑ってくれる

そんな人が居てくれるような死に方をしたいなあと思うナガタなのでした。

(26歳女子なのに…)